相続税をより詳しく知る

相続税をより詳しく知る

「突然相続が発生して、何をどうしたらいいかわからない」
そんな方のために、相続税の申告についてより詳しく解説していきます。

BPS税理士法人

1、相続税とは?

1-1 どんな時に課税されるのか

相続税は身近な方が亡くなった時に、その方から財産を無償で譲り受けた人にかかる税金で、その取得した財産が課税の対象となります。主に相続、遺贈、死因贈与(死亡したら財産を渡す契約)により財産を取得した人(個人)が相続税を納めることになります。

1-2 相続人となる人

民法では相続が発生した場合に相続人となることができる者を定めています。被相続人(亡くなった人)の配偶者は常に相続人となりますが、その他の親族については相続人となることができる順位があります。

【第1順位】直系卑属(主に子供。子供が亡くなっている場合には孫など)
【第2順位】直系尊属(主に父母。父母が亡くなっている場合には祖父母など)
【第3順位】兄弟姉妹

例えば、被相続人の遺族に母、子供、孫が存命している場合は、第1順位の子供のみが相続人となります。

またこの場合に、子供が被相続人より先に亡くなっていた場合には、子供の代わりに孫が相続人となります。子供の代わりに相続人となった孫のことを代襲相続人と呼びます。

1-3 課税の対象となる財産は?

①相続税の納税義務者の区分ごとに課税の対象となる財産の範囲

【無制限納税義務者】

相続又は遺贈(死因贈与を含む)により取得した財産の全部に対して、相続税が課されます。

【制限納税義務者】

相続又は遺贈(死因贈与を含む)により取得した財産のうち、日本国内にあるものに対して相続税が課されます。

上記の2者では、「国外財産について課税の対象となるかどうか」が異なります。

②無制限納税義務者と制限納税義務者の判別

【無制限納税義務者】

  1. 日本国籍があり、相続開始の時において日本国内に住所を有していた個人、もしくは日本国籍があり、相続開始の時において日本国内に住所を有しない個人でその相続開始前10年以内のいずれかの時において、日本国内に住所を有していたことがあるもの。
  2. 相続開始の時において日本国内に住所を有していた一時居住者もしくは相続開始の時において日本国内に住所を有しない個人で日本国籍を有しているが、その相続開始前10年以内のいずれの時においても日本国内に住所を有していなかった個人又は相続開始の時において日本国内に住所を有しない個人で日本国籍も有しない個人(被相続人が一時居住被相続人、外国人被相続人、非居住被相続人に該当している場合を除く)。

【制限納税義務者】

無制限納税義務者で上記 2. の場合の被相続人が一時居住被相続人、外国人被相続人、非居住被相続人である場合。

1-4 いつまでにどこへ申告書を提出するのか

相続税の申告期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内となっており、例えば1月6日にお亡くなりになった場合には、その年の11月6日が申告期限となります。もし、この期限の日が土日祝日に該当するときは、これらの日の翌日が申告期限となります。

相続税の申告書の提出場所は、相続が発生した時において被相続人の住所地が国内にあった場合は、被相続人の住所地を管轄する税務署に相続税の申告書を提出することになります。

被相続人の住所地が日本国内になかった場合は、各相続人の住所地を管轄する税務署が相続税の申告書の提出場所となります。

なお、相続人が2人以上いる場合で、相続税申告書の提出先の税務署が同じ場合には、各相続人が共同して相続税の申告書を税務署へ提出することが出来ます。

2、財産の評価方法

相続税の財産の評価は原則、被相続人が亡くなった日の時価により評価します。控除すべき債務はその時の現況によることとされています。代表的な財産について、具体的な評価方法は次の通りです。

2-1 不動産

①家屋は固定資産税評価額により評価

被相続人が生前に賃貸をしていた場合には、固定資産税評価額から借家兼割合などを考慮して、自宅として利用していた場合よりも低い評価で相続税の課税価格とします。

②土地は国税庁に定められている路線価方式もしくは倍率方式のいずれかが原則的な評価方法

被相続人が生前所有していた土地が路線価地域と倍率地域のどちらに該当するかは、国税庁HPの財産評価基準書により確認ができます。倍率や路線価の価格も財産評価基準書より確認できます。

【倍率地域に該当する場合】

固定資産税評価額に国税庁が指定する倍率を乗じるだけです。

【路線価が付されている地域に該当する場合】

路線価に土地の面積を乗じて計算をすることが出来ますが、この場合に補正率などを考慮しないと本来の評価額より高額に評価してしまい、過大な納税をすることとなってしまいます。

またセットバックや不整形地、都市計画道路予定地など個々の事情により土地の評価をさらに下げる評価方法があります。

※土地の評価は1%の評価減が適用できただけでも百万円単位で評価額が変わることがありますので、専門家に任せた方が適切な節税を実現できます。

2-2 非上場株式

被相続人が上場していない非上場会社の株式や持ち分を持っていた場合には、その株式や持ち分が相続財産となります。ただし上場企業ではないので、評価方法として証券会社等での取引価格で評価をすることができません。

①国税庁の財産評価基本通達に準じて以下のいずれかで評価
 ・類似業種比準価額
 ・1株当たりの純資産価額
 ・会社の規模によっては上記二つを一定の算式により合計した金額

②被相続人が有していた議決権割合が少数の場合、配当還元価額方式により評価

③これら以外にも特定会社に該当する場合、該当する特定会社の区分に応じて各評価方法により評価

赤字が続いていた法人であっても、上記の財産評価をした結果、思わぬ評価額となる可能性があります。相続が発生する前にあらかじめ対策をしておくことが重要です。

2-3 その他の財産

①現金預金については、被相続人が死亡した日の残高(定期預金などの場合は利息も含めます)。

②上場株式などは被相続人が死亡した日の取引価格(証券会社などに問い合わせると教えてくれます)。

③車や骨董品、宝石などの動産は売買実例価額、精通者意見価格などが原則ですが、特則として同種同規格の新品の課税時期(被相続人が死亡した日)における小売価額から減価の額を差し引いた金額での評価でも認められます。

2-4 控除できる債務

被相続人の未払の医療費や租税公課(固定資産税、所得税、住民税など)、銀行などからの借入金は被相続人の債務として相続財産から控除できます。

また、被相続人の葬式費用も相続財産から控除できますが、葬式費用には該当するものと該当しないものがあります。以下、代表的なものを列挙いたします。

【葬式費用に該当するもの】

本葬式費用、通夜費用、納骨費用、戒名料、お寺へのお布施、通夜の飲食代、お手伝いしてもらった人への心付け

【葬式費用に該当しないもの】

香典返し費用、墓碑、仏具代、墓地購入費、初七日法要費用、四十九日法要費用、永代供養料

なお、債務や葬式費用は特殊な場合を除き、相続人の取得した財産から控除できますが、相続人(包括受遺者含む)に該当しない方が債務や葬式費用を負担しても、控除することはできませんので注意が必要です。

香典は相続税の課税はされませんので、非課税となります。

3、納税額の計算方法

相続税の課税価格(相続税が課される財産の金額)は、被相続人から相続又は遺贈(死因贈与を含む)により財産を取得したすべての相続人の財産の価額の合計額(被相続人の債務や葬式費用を控除した後の金額)から、基礎控除額を控除します。

基礎控除額とは残された遺族の今後の生活に配慮し、相続税が課されない金額の範囲になります。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
※法定相続人とは、相続の放棄があった場合にその放棄がなかったものとした場合の相続人

上記の計算の結果、残額がある場合は相続税の納税と申告が必要となります。

残額がない場合は相続税の納税と申告の必要はありませんが、申告要件のある規定(配偶者の相続税額の軽減などの規定)を適用する場合は、申告のみ必要となります。

3-1 課税価格の特例

課税価格の計算をする上で、課税価格を下げることができる特例規定は検討をする必要があります。その代表的なものが小規模宅地等の特例です。

被相続人が生前に居住の用に供していた宅地や事業、貸付事業の用に供していた宅地などが対象となります。

適用するには細かい規定がまだありますが、適用できる場合には、限度面積までに限り、居住用、事業用宅地等は80%、貸付事業用宅地等は50%まで土地の評価を減額することができます。

3-2 生前贈与加算

相続税の課税価格を計算するにあたって、相続開始前3年以内に被相続人から贈与により財産を取得した相続人がいる場合には、その相続人は相続税の課税価格にその贈与財産を含めて計算しなければなりません。

加算される価額は贈与の時の評価額になります。

3-3 生命保険金等

生命保険会社から被相続人の死亡により保険金が支払われた場合には、相続財産として課税されます。ただし非課税枠があり、相続人は500万円に法定相続人の数を乗じた金額まで非課税となります。

非課税金額=500万円×法定相続人の数

退職金についても被相続人の死亡により死亡退職金として支払われた場合には、相続財産として課税されます。死亡退職金も非課税枠があり、死亡保険金と同様です。

死亡保険金や死亡退職金の支払額から非課税金額を控除した残額を、相続税の課税価格に含めます。

3-4 相続税額の計算方法

相続人の判定や財産の評価額の計算が終われば、最後は相続税額の計算となります。単純に「財産の課税価格×税率」ではありませんので、少し複雑です。

相続税額は相続税の課税価格から基礎控除額を控除した残額を、被相続人の法定相続人の数に応じた相続人がそれぞれ法定相続分、代襲相続分に応じて取得したとした場合におけるその各取得金額につき、それぞれ超過累進税率を乗じて計算した合計額となります。

その合計額を各相続人が実際に取得した財産の価額に応じた割合で按分をします。

按分後の金額に2割加算や配偶者の税額軽減、未成年者、障害者控除などの税額調整を行って、各相続人の相続税の納税額が算出されます。

例えば、財産を取得した人が被相続人の配偶者であった場合、取得した財産の課税価格が1億6千万円までであれば、相続税額を0円にすることができます。

3-5 相続税額の計算例

前述に沿って、相続税の計算をしていきます。

相続人:A、B、C
法定相続分:それぞれ3分の1ずつ
遺産総額(債務控除や生前贈与加算など考慮後):9,600万円

①法定相続分で各相続人が財産を取得したものとした場合の財産の取得価額

9,600万円-基礎控除額(3,000+600万円×3)=4,800万円
4,800万円÷法定相続分(3分の1)=1,600万円
A、B,Cはそれぞれ1,600万円分の財産を取得

②各相続人が取得した財産の価額にそれぞれ相続税の超過累進税率を乗じる

A:1,600万×15%-50万円=190万円
B:1,600万×15%-50万円=190万円
C:1,600万×15%-50万円=190万円

※税率は国税庁のHP掲載の相続税の速算表を参照

③相続税の総額計算

A190万円+B190万円+C190万円=570万円→相続税の総額

④各相続人へ按分

実際の財産の取得状況がA:3,000万円 B:5,000万円 C1,600万円の場合

A:570万円÷9,600万円×3,000万円=1,781,250円
B:570万円÷9,600万円×5,000万円=2,968,750円
C:570万円÷9,600万円×1,600万円=950,000円

※簡便的に計算をしておりますので、実際の計算では端数処理などもあります。

⑤税額の調整

Cの年齢が18歳であった場合、未成年者控除が適用できます。
10万円×(20-18)=20万円→未成年者控除金額

⑥納付税額

A:1,781,200円(百円未満切り捨て)
B:2,968,700円(百円未満切り捨て)
C:750,000円(未成年者控除後)

上記が最終的な各人の相続税の納付税額となります。


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